サカナクション

【LIVE REPORT】


 いよいよラストに登場したのはサカナクション。全9組のアーティストが競演を見せた「ビクターロック祭り」のヘッドライナーをつとめた彼らが見せたのは、絶頂がずっと続くような、完璧なショーだった。

 水滴のSEから大歓声に迎えられて登場した5人が最初に披露したのは、“ミュージック”。5台のコンピューターを並べたラップトップスタイルでのスタートだ。そこから曲中の暗転でバンドスタイルに転じる専売特許の演出も見せる。オーディエンス全員が飛び跳ね、服がビリビリと震えるような重低音と強力なダンスビートで一気にクライマックスまで上り詰める。考えてみればサカナクションにとって、ここ幕張メッセはワンマンで何度も立ってきた場所だ。さすがの風格。
 そして、そこから続けざまに披露したのは彼らをシーンの最前線に押し上げた代表曲が並ぶ鉄壁のセット。“アルクアラウンド”から「ありがとう!」と告げて“セントレイ”、そして「一緒に踊ろう!」と“夜の踊り子”。ドーパミンが出まくるような展開だ。ハンドクラップが、合唱が巻き起こり、レーザーが飛び交う。メンバーだけでなくPAやライティングも含めた「チーム・サカナクション」全員で作り上げるサカナクションのライヴ。「ビクターロック祭り」というフェスの場でもそのマジックは具現化し、ドラマティックな一体感でオーディエンスを包む。
 ひたすらクライマックスが続いていくような展開は中盤以降も続いていく。「♪ラーラララーラー〜」の大合唱が巻き起こった“アイデンティティ”から、途切れることなく “ルーキー”へ。岩寺基晴(G)と草刈愛美(B)がパーカッションを力強く叩き、そのビートが高揚感を煽る。「ビクターロック祭り!」と叫ぶ山口一郎に大歓声が応える。

 そして本編ラストは“Aoi”。爆発するような反響の中、テンションを高めるだけ高めて「ありがとうございました、サカナクションでした」と5人はステージを一旦降りた。ここまでMCは一切なし。上昇するジェットコースターに乗り続けるような、あっという間の音楽体験。こういう体感を味あわせてくれるバンドは、今、彼らだけだろう。
 続いて、アンコールに応えて再び登場した5人は、一転、抑えたテンションとひんやりとしたセンチメントでフロアを心地よく満たす新曲“ユリイカ”を披露する。

 そして、山口一郎のMC。とてもいいことを言ってたと思うので、抜粋してお伝えします。

「一つのライヴを作り上げるのに沢山の人たちが関わっているのと同じように、一枚のCDを作り上げるにも沢山の人たちの力が必要なんですね。ラジオとかテレビ、お店を回る人もいたりして。そういうことも大事なことだし、そういう人たちのおかげで僕らはここに立てていると実感していて。感謝の気持ちもちゃんとある。だから、僕らだけじゃなく、ビクター全体を応援よろしくお願いします」
 そして、最後は“グッドバイ”。スケールの大きな詩情を歌い上げ、5人は去っていった。感動がこみ上げてくるようなエンディングだった。こうして「ビクターロック祭り」という初めてのフェスは、新たな音楽の未来への可能性に満ちた「特別な一日」として、幕を閉じたのだった。


ライター: 柴 那典/カメラマン:橋本 塁(SOUND SHOOTER)

【SET LIST】

  • 1. ミュージック
  • 2. アルクアラウンド
  • 3. セントレイ
  • 4. 夜の踊り子
  • 5. アイデンティティ
  • 6. ルーキー
  • 7. Aoi
  • EN. ユリイカ
  • EN. グッドバイ